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【白鵬・その6】後の先



後の先(ごのせん)

無門会空手の人はお気づきだろう。「後の先」は『受即攻』に置き換えることができる。そうするとグッっと臨場感が増す(笑)

白鵬の「後の先」の取組みを紹介。

  • 2009春場所4回 。北勝力、稀勢の里、日馬富士、朝青龍

  • 2010秋場所3回。稀勢の里、栃煌山、日馬富士

  • 2010九州場所7回の成功の後、8度目の稀勢の里で敗ける(63連勝でストップ)

実際に映像を見てみた。


「前みつの確保、右差し(右四つ)左上手」のため、立ち合い後の一歩は左から、が白鵬の型なのに対し、「後の先」は右を踏み込み右胸で相手を受ける、で始まる。「まず攻める」でなく「まず受ける」体勢を意識的にとるわけだが、見ていて本来の「後の先」とはちょっと違うのでは??と感じた。


『形』を優先させてもな…と。


もちろん、その形をとることで「受け」の大切さ、「受け」からの展開を試行・思考しただろう。そして稀勢の里に負けるまでの14回は見事にこの「形」で勝った。対戦者を見ると自分の型をもってる幕内上位が多く、それが白鵬の頭にあったのかもしれない。対戦者にとっても、いつもの白鵬の型でなく面食らったかもしれない。

実際の感触は彼らしか分からない。


一つ言えることは、白鵬が果敢に「後の先」に挑戦したこと。本書中に出会った『白鵬の情熱を満足させるものは「後の先」だけだった。』の記述にしびれた。双葉山に、白鵬に、著者の朝田氏にも畏敬の念、感謝の気持ち。



試行錯誤

9場所ぶりの「後の先」決行(稀勢の里戦)のあとのインタビュー。


「自分で後の先ができてるのか、ってのも分からない。まあ、勝ってるからできてるんでしょうね。結果的に下がらなかったということだから、難しいけどね」。

「(相手を)受けるというのは、とんでもないことなんですよ」。


目に頼らず、体全体で見る。心で見る…双葉山が言い残した呼吸の勘どころ…。

『攻めの受け身』、「後の先」を白鵬はそう表現した。「攻撃することを前提とした守り」、あるいは「積極的な守り」。



後の先の運動理論

三段階に分けての運動理論「白鵬伝(朝田武蔵)」より


【その1、敵の動きを見切る】

相手の体勢、速度、角度、高低などを、百分の何秒かに把握する。腹中にある相手の仕掛けを見切り、ほぼ同時に攻めどころを即断即決する


【その2、受ける。敵の力を無にする】

自分にむかってくる相手の力のベクトル方向を上下左右に逸らす作業。受け止めると同時に相手の力を無力化する技術。骨一本、関節一個までが、力を四散させるという目的に総動員される。「『十で来るとしたら、六とか七とかに減らす』そういう意識ありますね」と白鵬。


【その3、敵の裏をとる。後の先をとる】

敵の力を利して、そこを突く。

守りの構えから、間髪を入れずに攻撃に転じる。静から動へ。

一連の流れに刹那も転換点があってはならない。

反動を付けずに、攻めの動作に移るという身体操作が求められる。

すかさず自分の得意の型に持ち込む。


次は「後の先」の集大成とも言える、白鵬の取組みを紹介。


朝田武蔵というジャーナリストが丁寧に取材、ロングインタビューで白鵬のそれに迫ってくれた『白鵬伝』と、彼の自著や実際の取組み(Youtube)を参考に、テーマを何回かに分けて書いてみる

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