「合気道はなぜ強いのか?」から考える武術論(その5)
ムエタイはなぜ立ち技最強と呼ばれるか?
エネルギー投射の効率論と確率論から考察した。
戦争では、爆弾などを相手の陣地にいかに効率的に、確率高くして打ち込めるか、すなわち相手にエネルギー投射できるかで勝敗は決まる。
個人の戦いも同様で、同じ体格の人間が戦った場合、相手に接近してエネルギー投射したほうが効率が良い。身体に密着したほうがコントロールしやすい。
ボクシングならクリンチすればパンチを防げる。ムエタイでは首相撲。総合ならタックル、寝技はさらに密着度が増すので打撃オンリーの人間はコントロールされるがままになる。
整理すると格闘技の試合では密着度の高い技を得意とする者が、エネルギー投射が相手より高くなるため時間がたつほど有利となる。
競技の特性として、密着度の高いブラジリアン柔術は有利に。打撃系の人は終始ロングの間合いを保つか、短期決戦でのKOにしか勝機が見いだせない。
ムエタイは立ち技最強と言われるが、その秘密もエネルギー投射の確率論と効率論を間合いによって使い分けている点にある。
遠い間合いから踏み込もうとするとタイ人は長い脚のストッピングで前進を止め、ミドルキックで腕を壊しにかかる。これをかいぐぐりパンチの間合いに入ると彼らは打ち合わず首相撲で身体を密着、戦いを切り替える。
パンチの得意な選手もムエタイ選手には何もできず…ムエタイに勝つにはムエタイルールで戦わざるを得ず…これがキック界でムエタイが最強と言われる構造だ。
そんな中、藤原敏男はどうやって外国人初のムエタイ王者になれたか、その考察はまたの機会に。。
多様な実戦の体系とは異なる、リングや金網に囲まれた特殊な環境下とルールの中で発達した体系内のもの。総合格闘技やムエタイにおける強さは、そのまま実戦における強さとはなりえないが、実戦の一局面を切り取ったとき、非常に有効な能力を身につけることができるということだ。
格闘技はルールができた時点で、良くも悪くもスポーツとしての発展を遂げる。スポーツとしての細分化がされない伝統武術の体系は、どうやって強さの育成と検証をしていけばいいのだろうか?(続く)
引用の文献「合気道と中国武術はなぜ強いのか?(山田英司)」
最初本の表題を読んだとき、型稽古が中心の合気道を揶揄した本かと思ったがそれは誤りで、表題通りの主張が新たな気づきと感動を与えてくれた。整理されたり考えたことを書いていくが、あくまで金子の咀嚼であることご容赦
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